自社の業務は対象になる?育成就労制度の分野・職種と業務範囲の判断ポイント
【免責事項】 育成就労制度は新しい制度であり、細かな業務範囲の運用ルールは変更される可能性があります。本記事は公開日時点の出入国在留管理庁等の公表資料(現行の特定技能制度の運用基準等)に基づいて作成しています。最新の分野別運用方針については、必ず各管轄省庁の公表資料をご確認ください。
「育成就労制度を利用して、うちの会社でも外国人材を受け入れたい」 そう考えた企業担当者様が最初に直面するのが、「自社の業務は、制度の対象になっているのか?」という疑問です。
制度の対象分野は決まっていますが、実は「対象の業種に当てはまっていれば、どんな作業でも任せてよい」というわけではありません。不適切な業務配置は、在留資格制度上の問題や行政指導、今後の受け入れ継続への重大な影響につながる可能性があります。
本記事では、自社の業務が育成就労の対象になるかを確認する際の重要ポイントや、陥りやすい「グレーゾーン」の判断ミスについて、行政書士が実務目線で解説します。
自社の業務は対象になる?最初に確認したい「育成就労の目的に沿った業務」の考え方
業種の一覧を見る前に、まずは外国人材に任せようとしている「日々の作業内容」が、制度の趣旨に合致しているかを確認する必要があります。
継続的な「技能修得とは無関係な業務のみ」は不可
育成就労制度では、特定技能1号への移行を見据えた技能修得が前提となります。そのため、技能修得とは無関係な業務のみを継続的に担当させる運用は認められません。 [▶︎ 参考記事:育成就労から特定技能へ移行するには?企業が知っておきたい要件・手続き・長期定着のポイント]
「主たる業務」と「付随的な業務」の境界線
一方で、日本人従業員も通常行う清掃や片付けなどの付随業務まで一律に禁止されるものではありません。現場では皿洗いや片付け、準備といった作業が必ず発生しますが、これはあくまで「日本人が同じ業務を行う場合でも通常発生する範囲」であれば問題ありません。メインの業務から外れた雑用のみを専従させるような運用は認められない、という点が重要です。
育成就労制度の対象として想定される産業分野一覧
業務の考え方を押さえた上で、対象となる産業分野を確認しましょう。 育成就労制度は特定技能1号への移行を前提として設計されており、現時点では特定技能制度の対象分野に準拠した運用が想定されています。ただし、正式な対象分野や詳細な運用方針については、今後公表される省令・告示等をご確認ください。
【現時点で公表資料等から想定される対象分野】
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 自動車運送業
- 鉄道
- 林業
- 木材産業
※社会情勢に合わせて分野が再編・追加される可能性があるため、常に最新の動向を追う必要があります。
ここが落とし穴!よくある業務範囲の「グレーゾーン」と判断ミス
企業担当者様からよくご相談いただくのが、「一見対象に見えるけれど、実は注意が必要」なグレーゾーンの業務です。
【注意】 以下の事例は、現時点で公表されている特定技能制度の運用基準等を参考にした一般的な考え方です。育成就労制度の分野別運用方針の確定に伴い、今後取扱いが変更される可能性があります。
【外食業】接客・調理は対象だが「単なるチラシ配り」は?
外食業分野では、飲食物の調理や接客、店舗管理が主たる業務となります。手が空いた時間に店舗周辺を清掃する等の付随業務は当然可能ですが、「1日中、駅前でチラシ配りだけをさせる」「バックヤードでの皿洗いのみに専従させる」といった、技能修得に繋がらない配置は認められません。
【建設業】「現場の清掃や資材運搬のみ」の作業は?
建設分野でも同様に、特定の専門工事の技能を修得させることが目的です。「現場での資材運びだけ」「作業後の清掃だけ」を長期間にわたって指示することは、育成の趣旨から外れるためNGとなります。
適正な業務配置は「離職防止と定着」の基本
「これくらいなら問題ないだろう」という思い込みによる不適切な業務配置は、行政指導や受け入れ継続への影響につながる可能性があります。さらに、故意性や悪質性が認められる場合には、不法就労助長罪などの法的責任が問題となることもあります。
また、外国人材は、「どのような仕事を任されると聞いて来日したのか」という強い期待を持っています。採用時の説明と実際の業務内容に大きな乖離があると、制度上の問題だけでなく、信頼関係そのものを損ないかねません。「この会社で働き続けたい」という気持ちを失わせ、早期離職や転籍の要因にもなり得ます。相手を尊重した適切な業務配置は、法令遵守だけでなく「人材の定着支援」という観点からも非常に重要です。 [▶︎ 参考記事:育成就労制度で必要な社内支援体制とは]
分野ごとの「独自ルール」にも注意が必要
対象業務のクリアに加えて、分野ごとに設定されている独自の要件も満たす必要があります。
1. 協議会への加入義務など特有の手続き
現行の特定技能制度では、多くの分野で管轄省庁が設置する「協議会」への加入が求められています。育成就労制度においても同様の運用が想定されていますが、加入時期や手続きの詳細は分野ごとの運用方針をご確認ください。事前のスケジュール確認が必須となります。
2. 分野特有の受け入れ枠(人数枠)
分野によっては、「事業所単位での受け入れ上限人数」が設けられている場合があります。算定方法は分野ごとに異なるため、自社が何人まで受け入れ可能か事前確認が必要です。
業務が対象になるか迷ったら、受け入れ可否の事前診断を
育成就労制度の活用にあたり、最も重要かつ慎重な判断が求められるのが、この「自社の業務と制度要件のすり合わせ」です。
「この業務は対象になるのか?」
「付随業務としてどこまで任せられるのか?」
「人数枠や協議会の要件を満たしているのか?」
育成就労制度では、「採用してから考える」のではなく、「採用前に制度上の適合性を確認する」ことが重要です。全体のスケジュール感をつかむためにも、早めの確認をおすすめします。 [▶︎ 参考記事:育成就労制度の受け入れフローとは?企業が知っておきたい手続きと期間の目安]
実際の業務内容や求人内容をもとに事前診断を行うことで、後から「この業務では受け入れできなかった」「予定していた仕事内容では認められなかった」といったトラブルを防ぐことができます。
行政書士へのご相談では、貴社の実際の業務内容や現場の状況を丁寧にヒアリングし、コンプライアンス違反のリスクがないか、適正な受け入れが可能かを専門家の視点から診断いたします。制度の利用を検討された段階で、ぜひお気軽にお問い合わせください。

